オノマトペ

オノマトペとは、漫画によく出てくる、日本人が大好きなやつです。
「ドカーン」「バキューン」「バキッ」「ピカピカ」「ガーン」「ドキドキ」「ピコピコ」「キラキラ」とかです。
 これを使いまくると、陳腐になるということです。

・例

 ぽかぽかの春、ルドルフはテクテクと道を散歩していた。
 ルドッルド〜♪
 鼻歌交じりでとても機嫌がよいと見える。
 すると―― 
 ドシッ、ドシッ……。
 道の向こうから大きなトラねこが歩いてきた。
 ドカッ!
 すれ違いざま、ルドルフとトラの肩がぶつかった。
「あ、ごめん」
「ごめんじゃねーッ」
 ドゴォッ!
 ペコリと謝るルドルフのほっぺたに、トラねこの豪腕が飛び込んできた。
 ヒュー、ボチャリ
 ルドルフは吹っ飛び、道の脇に流れるドブ川に落ちてしまった。

 うららかな午後だった。ルドルフの毛皮を春の日差しが温める。自然と、散歩する足取りも軽くなった。自作の鼻歌まで漏れる。
 すると、道の向こうから大きなトラねこが歩いてきた。まだ距離が空いているにも関わらず、彼が一足踏み出すごとに地面が揺れた。地響きにも似た音を立てながら近づいてくる。
 すれ違いざま、ルドルフとトラねこの肩がぶつかった。ルドルフの体に強い衝撃が走る。ルドルフは咄嗟に謝った。
「あ、ごめん」
「ごめんじゃねーッ」
 トラねこの太い腕が振り上げられ、拳がルドルフの頬にめり込んだ。巨大な破裂音が道の端から端まで響いたが、聴覚の麻痺したルドルフにそのことはわからなかった。 
 ルドルフの体は宙高くまで舞い上がり、放物線を描きながら道脇のドブ川に落ちていった。水を叩く音と共に、泥が大きくはねた。

 こんなふざけた文章でも、上よりは下のほうが小説っぽい感じがしません!?
 ようは第一印象の問題なのです。第一印象でいかに小説っぽく見せられるかが大切なのです。
 人間は外見ではないといいつつ、外見で判断するのが人間です。
 ですから、漫画ならば有効なオノマトペも、小説ではあまり使わないほうが賢明です。

 けれど私は、絵本や児童文学とかの、オノマトペを多用した「あの雰囲気」も大好きなので、まったく使うなとは思いません。
 これも臨機応変に、オノマトペがしっくりくると思えば、迷わず使っちゃえばよいと思います。

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